大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和39年(ワ)8151号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕そこで右買取請求権の行使を前提とする原告らの予備的請求について判断する。

昭和三九年一〇月八日をもつて買取請求により(六)の建物につき原告らに対し所有権移転の効果を生じていることは既に判示したとおりである。ここで検討を要するのは、右目的家屋が一棟の家屋であつて、それぞれ所有者を異にする二筆の土地上にまたがつて存在するため買取請求権の行使が許されるか否か、許されるとした場合その建物所有権の帰属がどのように考えるかの点である。

一棟の建物がその構造上区分所有権の対象となり得る場合、または多少の改造により区分所有権の対象となり得る場合に、その各別の建物部分につき買取請求権の行使ができることは特に問題はないと考えられる。しかし右の建物が特にそのような構造を有するものと認めるべき資料はないから、一個の所有権の対象となるべき建物と考えるほかない。このような建物について、所有者の異る各土地上の建物部分について各土地所有者別に買取請求を認めることは、一個の物の上に二個の所有権を生じさせることになるので、右のような買取請求を認めることはできないものと考える。しかし、だからといつて、このような場合まつたく買取請求権の行使を認めないとするのは、建物所有者に対し建物に投入した資金を可及的に回収せしめ、徒らに建物を毀滅させその効用を失わしめることを避けようとする借地法一〇条の制度の趣旨に照らすと妥当でないと考えられる。

したがつて、建物が所有者を異にする場合でも一方の土地に重要な或は大部分の建物が存在し、他方に重要でない部分或は極めて一部のみしか存在しないため、後者の土地上に対する建物部分を特に多額の費用を要することなく前者の土地上に引き移すことのできる場合、或は特に多額の費用を要することなく且つ建物の経済的価値を著しく失わせることなく後者の土地上に存する建物部分を取り毀すことのできる場合は、前者の土地の所有者に対してのみ買取請求権の行使を認めるべきであるが、その他の場合については各土地所有者の共有に属するものとして買取請求を認めるべきである(従つて、一方の土地所有者に対してのみ買取請求をしたり、一方について買取請求権発生の要件を欠いている場合は、買取請求は許されものと考える)。

このような買取請求権の行使を認めるときは、建物の所有権および土地の利用関係について両土地所有者間に複雑な権利関係を生じさせる結果となるが、だからといつて買取請求権の行使を許さない理由とすることはできないと考える。

これを本件についてみるに、弁論の全趣旨によると、(六)の建物はほぼ同じ割合で原告山室所有の(六)の土地と、同高瀬所有の第三目録記載の土地にまたがつて存在していることが明らかであるから、(六)の建物は原告らの買取るべき価格の割合に応じて共有すべきものとして、買取請求の効果を認めるのが相当である。鑑定の結果によると、(六)の建物のうち原告山室所用の(六)の土地にかかる部分の買取るべき価格は一三万二八八八円、原告高瀬所有の第三目録記載の土地にかかる部分は一五万五五六八円(いずれも原告らの主張のとおり)をもつて相当と認めることができ、他にこれを左右するに足りる資料はない。そこで右価格の割合によつて算出すると、被告繩の買取請求により、(六)の建物の所有権持分のうち原告山室には一七一七分の七九一(原告ら主張の六八六八分の三一六四に同じ)、原告高瀬には一七一七分の九二六(原告ら主張の六八六八分の三七〇四と同じ)の割合で所有権が帰属すべきことが計数上明らかである。

以上のとおりであるから、被告繩は、原告山室から一三万二八八八円、原告高瀬から一五万五五六八円の各支払いを受けるのと引換えに、(六)の建物につき昭和三九年一〇月八日の売買を原因として、原告山室に対しては持分一七一七分の七九一の、原告高瀬に対しては一七一七分の九二六の所有権移転登記手続をし、かつ(六)の建物を原告らに明渡し、(六)の土地を原告山室に、第三目録記載の土地を原告高瀬に各明渡さなければならないこととなる。(川上正俊)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!